株式投資をしている人であれば、一度は「アノマリー」という単語を耳にしたことがある方も多いかもしれません。
株式相場を分析する手法として「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」がありますが、数値やデータなど目に見えるものでは説明できない事柄(=アノマリー)が起きるのもまた株式投資の醍醐味といえるでしょう。
今回の記事で取り上げるアノマリーもまた絶対的なものではありませんが、その知識が頭の片隅にあるか否かでは投資パフォーマンスに差がつく可能性は大いにあります。
そこで、この記事ではアノマリーの概要やその特徴を月別にまとめてみました。
株のアノマリーとは
アノマリーはよく「変異性」と訳されることが多く、その言葉の通り説明しづらい「変な」事象を指します。
株式においてアノマリーは具体的な根拠がないものの、予測があたりやすい経験則(一種の法則)のことを示す単語として使われています。
一例として「ジブリの法則」が挙げられ、これは「金曜ロードショーでジブリが放送されると、株や為替の相場が荒れる」といったものです。
実際に作品が放送されたあとの為替相場はもちろんのこと、翌週月曜日の株式相場が乱高下するケースが多く見受けられました。
ジブリ作品と相場に直接的な関係はありませんが、こうした言葉で説明できない一定の法則のことを「アノマリー」と呼んでいます。
ジブリの法則のほかにも、企業のウェブサイトで社長が腕組みをしていると株価が下がるといった「腕組みの法則」などがあります。
アノマリーには古いものから新しいものまで様々な説がありますが、アノマリーを知っておくことでパフォーマンスの向上が見込まれることはもちろん、知っておいて損はないといえるでしょう。
最近ではタピオカが関連している?
ここ最近、囁かれるようになったのがタピオカにまつわるアノマリーです。
今回のコロナ禍による不況をはじめ、タピオカが流行ると不況になるといったもの。
実際にこれまでのタピオカブームと不況を照らし合わせると、次のようになります。
- 第一次タピオカブーム(1992年):バブル崩壊
- 第二次タピオカブーム(2008年):リーマンショック
そして第三次タピオカブーム後のコロナ不況といった具合に。
具体的根拠がまったくないアノマリーではあるものの、こうしてみるとなかなか興味深いことがわかります。
株のアノマリーを月ごとに解説
株のアノマリーには先述したような過去の経験則をもとに語られるものもあれば、季節性のものも多くあります。
ここでは株のアノマリーの特徴を月ごとに見ていきましょう。
1月
一般に「ご祝儀相場」と呼ばれる1月のマーケットは、年始の立ち合いである取引初日(=大発会)に機関投資家がご祝儀を含めた買い戻しを行うケースが多く、中旬頃まで株価が上昇しやすい傾向にあります。
2月・3月
2月に入ると3月決算銘柄の決算発表見込みが出ることもあり、節分のころは株価が天井(高値)をつけるケースが多く見受けられます。その後は調整が続き、3月のお彼岸を目処に底を尽きるでしょう。
また、3月中旬からは機関投資家を中心として配当金狙いの買いが増えるものの、実際のマーケットとはあまりリンクしていないことがほとんどです。
その理由として、日本のおける国内株式相場は外国人機関投資家の動きに左右されやすいことが考えられます。
4月
4月は日本が新年度を迎えるため、株価が上がりやすい傾向にあります。
また、国内の機関投資家も新年度に入るため、取引が活発化してくるでしょう。(5月上旬まで決算発表が多いことも背景として考えられる)
5月・6月
5月は「Sell in May」というアメリカで昔から使われる相場の格言があり、言葉のとおり「5月に売って相場から離れなさい」といった意味を指しています。
そのため、GWのころに高値をつけたあとは夏にかけて相場が下がりやすいとされます。
7月・8月・9月
夏のはじめは「サマーラリー」と呼ばれ、株価が上昇傾向にあるものの、その後は「夏枯れ相場」と呼ばれ、1年でもっとも取引参加者が減少する相場が訪れます。
その理由として、日本ではお盆休みの時期を含むことや、海外でも夏季休暇を取得して避暑地でのんびり過ごす慣習があることが考えられます。
また6月に株主総会などを一巡し終え、これといったイベントも少ないこともあり、積極的な売買が起こりにくいことも挙げられるでしょう。
10月・11月
10月はパフォーマンスの悪い月とされており、過去の米国発の暴落は10月に集中しています。
事実、1929年の世界恐慌で株価が下落した「ブラックチューズデー」は10月29日で、1987年の「ブラックマンデー」も10月19日でした。
とはいえ、この時期に買うと儲けが出やすいのもある種のアノマリーといえるでしょう。
12月
12月には「クリスマスラリー」と呼ばれるアノマリーがあり、特に米国においてクリスマスから新年1月にかけて株価が上がる現象がよく見られます。
投資初心者が知っておきたいアノマリーの使い方
ここまでアノマリーについて紹介してきましたが、アノマリーは当たるときもあれば外れることも多々あります。
とはいえ、過去の傾向や市場のサイクル、季節性に基づいて確立されたアノマリーを活用している投資家は多く、なにかと話題になることも珍しくありません。
アノマリーを過信しすぎるのもよくありませんが、アノマリーを参考にしつつテクニカル分析などの知識をきちんと学び、自分のトレードを確かなものにしていきましょう。
アノマリーを有効活用することで、これまで以上にマーケットの動きがわかるようになり、投資判断の際にそこまで迷わなくてよくなるはずです。
少額投資から始めれば、アノマリーを体感しながら経験を積める
投資初心者がアノマリーを参考にして投資を行う場合、まずは少額から始めることをおすすめします。
アノマリーは投資金額の多寡にかかわらず体感できるため、いきなり多額の資金を投入することは極めてリスクの高い行動だといえます。
また少額投資をする際、もし今現在活用していないようであれば「NISA」を利用すると良いでしょう。
NISAでは国内外内の株式を扱っていることに加え、通常であれば投資で得られた利益に20.315%の税金が課税されるところ、NISAであれば非課税で運用できます。
まずは少額で1年間運用したのち、アノマリーが株式相場にどのように影響を及ぼしているのか確認してみてください。
まとめ
今回は株式投資初心者向けに、「アノマリー」の概要と月別の特徴についてお伝えしました。
投資を始めようと思った際、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析を始めとした一定量の基礎知識を身につけることは大切ですが、得た知識がそのまま利益に直結するわけではありません。
そこで、自分の知識に経験則となるアノマリーをプラスすることでより投資判断がしやすくなると共に、株式投資の奥深さを再確認することができるでしょう。
この記事が少しでも参考になっていたら、幸いです。
※ライター:織瀬ゆり