少子高齢化や働き手の減少等により、老後へ漠然とした不安を抱えている人も多く、それに伴って資産運用に目を向ける人が増えています。
また、昨今ではコロナ禍も相まって、先行きの見えない現状からそうした傾向がより加速しているともいえるでしょう。
数ある投資手法の中から今回は「株式投資」に着目した上で、いまひとつ理解していない人も多い「株式分割」についてわかりやすく解説してみました。
この記事を読めば、株式投資に対してさらにワンランク詳しくなれるでしょう。ぜひご覧ください。
株式分割とは
株式分割とは、決められた割合に株式を分けることを指します。
たとえば株式分割が「1:2」という比率で行われた場合、保有している株数が1株から2株に増えることになり、それまで100株保有していた人は200株を持っている計算に。
株価についても、株式分割前に1株1,000円だとしたら分割後は1株500円の扱いになります。
つまり株数が2倍になったとしても、株価は反比例することから実質保有している株式の価値自体は変わることがありません。
株式分割前:100株 × 1,000円=10万円
株式分割後:200株 × 500円=10万円
株式分割は株主にとってみれば無償で所有株式数が増加する出来事であることもあって、「株式無償割り当て」と称されることもあります。
また、株式分割の対象となる株主は基準日に株主名簿に登録がある株主に限られ、基準日以後に株主となった人は含まれないことも抑えておきましょう。
株式分割を行うまで
株式分割を行うためには、所定の手続きを踏まなければなりません。
取締役会設置会社においてはまず取締役会で株式分割決議を行い、その際に分割の割合をどうするかといったことに加え、基準日や行使できる権利等の詳細について定めていきます。
また、決議で決まった内容については基準日の2週間前までに、基準日株主(基準日の時点で株主名簿に記載がある株主のこと)に対して公告を行う必要があります。
そして株式分割によって万が一1株に満たない端数が生じてしまった場合には、それらの端数を合計した分の株式を競売にかけたうえで、その代金を株主に還元しなければなりません。
株式分割が行われた後は、効力発生日から2週間以内に企業の管轄法務局に対し、変更登記申請を行います。
企業が株式分割を行う理由
ではなぜ、企業は株式分割をするのでしょうか。
そこには主に、次の理由が挙げられます。
- 株価を安定させるため
- 企業価値を向上させるため
- 指定替えを目指すため
それぞれについて、簡単に説明します。
株価を安定させるため
株式分割を行うと投資単価が下がることから、株式が購入しやすくなります。
結果として、株式の流動性が高まり、これまで価格の高さから手が出せなかった投資家も気軽に購入できるようになるでしょう。
また、流動性の高まりは株主の増加にもつながることから、企業側はより多くの株主によって支えられることになります。
このように株式分割によって価格形成の安定化を図れるほか、株主になりたい人に門戸を広げようとする企業の姿勢をアピールすることも可能です。
企業価値を向上させるため
先に述べたように、流動性の高まりによって購入希望者が増えると、結果として株価が上昇しやすくなります。
とはいえ、株式分割が起こることによって株式を売却する人も一定数存在することから、一概に株価が上がるわけではないことに注意が必要です。
それでも新たに株式を購入する人が増えることで需要が高まれば、株価の上昇と共に企業価値の向上が見込めるでしょう。
指定替えを目指すため
東京証券取引所では、株式市場として東証一部やマザーズなど5つの市場を開設しており、それぞれの市場に基準が設けられています。
基準として「株主数」や「流通株式数」、「売買高」、「時価総額」といった項目が設けられており、所定の基準を満たさなければ東証一部へ指定されることはありません。
そのため、マザーズをはじめとした新興市場から東証一部へ上場変更(指定替え)をしようと思った場合、基準を満たすための策として株式分割が講じられることもあります。
持ち株が株式分割!どんな影響がある?
さて、株式分割が行われた場合の企業側のメリットについてお伝えしましたが、投資家にとってはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
持ち株が株式分割になった場合のメリットとデメリットについて、見ていきましょう。
メリット
投資家のメリットとして、次の3点が挙げられます。
- 単価が下がるため購入しやすくなる
- 売買の自由度が上がる
- 配当が増える可能性がある
ひとつずつ見ていきましょう。
単価が下がるため購入しやすくなる
株式分割が行われることで株価が下がるため、購入するうえでのハードルが低くなります。
そのため、株価が高くて単元株の購入を見送っていた企業であっても、場合によっては手に入れられるようになるかもしれません。
・A社の株が1株あたり5,000円だった場合:5,000円×100株で50万円の資金が単元株を買うために必要
・A社が「1:2」で株式分割した場合:株価が一株当たり2,500円となるため、25万円で単元株の購入が可能
このように株式分割後は単元株を買うのに必要な資金が下がることから、株主になりやすくなることに加え、株主優待も受けやすくなるでしょう。
売買の自由度が上がる
単元株の購入に必要な資金が下がることに関連する話となりますが、株式分割が行われることによって売買の自由度が高まります。
購入しやすいことは先に述べましたが、それは同時に売却のしやすさにも繋がってきます。
日本株は基本的に100株単位での売却となっており、株式分割によって手持ちの100株が200株になった場合には、半分だけ売却するといった選択が可能です。
配当が増える可能性がある
配当は「1株あたり○円」という形で定められています。
株式分割が行われたとしても配当に関して変更が生じなければ、分割前の配当額が据え置かれます。つまり、実質的に増配の扱いになることになるのです。
また、配当に関して変更が生じた場合も、次のようなケースであれば増配の扱いとなります。
「株式は2分割し、配当は10円から6円へと変更する」
→100株持っていた人の持ち株は200株になり、それまで100×10で1,000円もらえていた配当が200×6で1,200円となる。(配当が200円増える)
なお、配当のみならず株主優待についても同様のことがいえます。
分割後も優待内容と条件に変更がなければ、分割後の安い値段で優待を受けることが可能です。
デメリット
投資家側からすると、株式分割によるデメリットはほとんどありません。
基本的にはメリットの多い出来事だといえるでしょう。
一方で、企業側のデメリットとしては株式分割に伴って株主数が増加すると、それだけ株式事務にかかる手間が一時的に増える(株主への通知や株主総会の案内など)ことが挙げられます。
【実例】2021年、今後株式分割が決まっている銘柄を紹介
ここでは、今後株式分割が決まっている銘柄のうち、主要なものをいくつかピックアップしてみました。
2021年6月株式分割銘柄
銘柄コード | 銘柄名 | 分割比率 | 効力発生日 |
7462 | ダイヤ通商 | 1:5 | 2021.6.25 |
3645 | メディカルネット | 1:2 | 2021.6.1 |
2021年7月株式分割銘柄
銘柄コード | 銘柄名 | 分割比率 | 効力発生日 |
4012 | アクシス | 1:2 | 2021.7.1 |
4709 | IDホールディングス | 1:1.5 | 2021.7.1 |
4966 | 上村工業 | 1:2 | 2021.7.1 |
6564 | ミダック | 1:2 | 2021.7.1 |
2021年10月株式分割銘柄
銘柄コード | 銘柄名 | 分割比率 | 効力発生日 |
7203 | トヨタ自動車 | 1:5 | 2021.10.1 |
7561 | ハークスレイ | 1:2 | 2021.10.1 |
9644 | タナベ経営 | 1:2 | 2021.10.1 |
サブ利用でおすすめの証券会社
ここでは、既に大手証券会社を利用している人にサブで利用してほしい、少額投資ができる証券会社をご紹介します。
複数の証券会社に口座を開設することで、利用できるサービスが増えるほか、手数料を安く抑えられるといったメリットがあります。
いくつかある証券会社の中でも、今回は「LINE証券」と「PayPay証券」について取り上げてみました。
LINE証券
LINE証券は2019年8月にサービスの提供をスタートした、比較的新しいスマホ証券です。
わかりやすい画面構成や操作の仕方が評価され、若い世代を中心に一定の人気を誇っています。
LINE証券では少額で投資を始められることに加え、時折実施されているキャンペーンを利用することで実質資金ゼロも投資を始められるのも魅力の一つでしょう。
また、LINE証券では入出金方法および入出金先のバリエーションが豊富なことでも知られています。
詳しくは以下の記事で解説しているので、併せて参考にしてみてください。
PayPay証券
PayPay証券はLINE証券と並んで人気のあるスマホ証券のひとつで、利用者の約6割が投資未経験者と株初心者を中心に人気を集めています。
その理由として1,000円からの少額投資が可能であるほか、とにかくアプリが見やすく使いやすいといった声が多く見受けられました。
PayPay証券についても、次の記事で詳しく解説していますので良ければ参考になさってください。
メリットの多い株式分割
株式分割は、投資家にとってメリットの多い出来事のひとつです。
また株式分割が行われる背景として、株価が大きく上昇したことにより手が届きにくくなった株価を下げるといった目的があるケースも。
株式分割を行う銘柄の多くは好業績であることが多く、株式分割が続くようであればそれだけ業績が良いとも捉えられます。
もちろん、株式分割をしたからといってその後も業績が好成績を維持し続ける保証はありませんが、中長期的な目線で見ればさらなる株価上昇が期待できるといえるでしょう。
株式分割が行われる際は、それまでの業績推移や株価のトレンドに目を払い、投資するかどうかを判断することをおすすめします。
株式分割が予定されている銘柄を確認し、新たな優良銘柄があるかチェックしてみてくださいね。
※ライター:織瀬ゆり