『0円投資』は、俗にいう「ポイント投資」のこと。
「元手ゼロからでも投資はできる!」という事実を、『0円投資』の言葉と共に広めているのが、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)の野原亮さんです。
そんな野原さんに0円投資を始めるべき理由や、上手に0円投資するためのコツをうかがいました。「投資はやってみたいけれど損したくない!」そんな方はぜひご覧くださいね。
元手ゼロで楽しめる「ポイント投資」
——まずは野原先生のご経歴から教えていただけますか?
私は2001年に証券会社に入社し、東京の茅場町周辺で営業活動を行っていました。当時はアメリカで「同時多発テロ」が起こり、相場が大混乱したのを覚えています。
その後さらに証券業を極めるために、転職して株式ディーラーとして経験を積みます。なかなか厳しい業界でした(笑)。そしてマーケティング職を経て、2016年にFPとして開業しております。
野原 亮(のはら・りょう)
明治大学政治経済学部経済学科卒業。現東証1部上場の証券営業・株式ディーラーとして従事。その後、営業コンサル会社を経てFPとして独立。中小企業の確定拠出年金を中心とした福利厚生の社外担当として活動、上場企業等の金融研修なども担当している。書籍に『スピードマスター 1時間でわかるiDeCo~50代からの安心投資』(技術評論社・2020年)『ポイントですぐにできる!貯金がなくても資産を増やせる「0円投資」』(日本実業出版社・2021年)がある。
——日頃はどのようなお客様の相談に応じているのでしょうか?
私は、中小企業が導入する「企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)」の専門家として、中小企業のお客様に対して企業型DCの導入支援や研修を行っております。経営者の方だけでなく、企業スタッフの方々の資産形成や、資産運用の相談を受けることもありますよ。
また本業と平行して、2017年から楽天証券でポイント投資を始めています。この4年間に蓄積した知識や経験を元に、先日「ポイントですぐにできる!貯金がなくても資産を増やせる『0円投資』」を出版させていただきました。
——『0円投資』とは何か、教えてください。
0円投資は、ポイ活によって集めたポイントや現金を使って資産運用することです。いわゆる「ポイント投資」のことですが、元手0円で獲得した現金が含まれますので、ポイント投資よりも少しだけ広い意味になります。
「元手ゼロからでもポイントを使って資産が蓄えられますよ」という意味を込めて、私は『0円投資』と呼んでいます。
ポイント投資と似た言葉に「ポイント運用」もあります。ポイント投資は、ポイントを使って株式や投資信託などを実際に購入し、売却した分が現金で戻ってくるのが特徴です。
一方のポイント運用は、指標となる投資信託などの価格変動に連動させる形で、ポイントを疑似運用するサービス。売却するとポイントのまま戻ってきます。「投資をする」というよりも、「投資体験をする」意味合いが強いですね。
私はポイント運用ではなくポイント投資をしてほしい、と日頃から力説しております。
自分に合うポイントで「リアルな投資経験」を積む
——なぜポイント運用ではなく、ポイント投資を推しているのでしょうか。
ポイント投資は実際の運用商品を購入できるので、よりリアルな投資経験を積むだけではなく、実在する資産を蓄えることができます。
現金を使わないので「ゲーム感覚」でできる気軽さもありながら、実際の商品を運用するのでゲームではない。ポケットマネーを使って投資をしている方と条件は変わりないですし、ポイント投資によって得た利益に対する税制などもまったく同じです。
なぜリアルにこだわるかというと、ポイント投資だけで終わってほしくないからなんですね。
近年「老後2,000万円問題」も叫ばれるように、私たちは老後の資産形成を自己責任で行う必要のある世代です。お金をコツコツ積み立てて運用する、その方法を覚える手段として、ポイント投資は最適だと考えています。
——ポイント投資のサービスは数多くありますよね。どうやって選んだらいいですか?
自分の生活スタイルに合うサービスを利用するといいと思います。
例えば普段から楽天市場や楽天ペイを利用されている方なら「楽天ポイント投資」がおすすめですし、ドコモユーザーやdカード利用者なら、dポイントを使った投資方法を選ぶといいでしょう。
——野原先生おすすめのポイント投資サービスは何でしょうか。
著書の中でも紹介しておりますが、私は「楽天ポイント」と「Tポイント」を使ったポイント投資を、特におすすめしています。
まず楽天ポイントは、楽天市場や楽天ブックス、楽天トラベルなど「楽天経済圏」のサービスを利用すれば、とにかく貯まりやすいのが特徴です。
楽天のショッピングサイトで楽天カードや楽天Payを使って買い物する。急ぎではない買い物をする日は、毎月1日の「ワンダフルデー」や毎月「5と0のつく日」などのキャンペーンがあるポイントアップデーに限定する。これだけで効率的にポイントが貯められるはずです。
貯まったポイントは、楽天証券で日本株式や投資信託の購入に充てられます。
——Tポイントの魅力も教えてください。
Tポイントは古くからある分、ポイントが貯まる場所やサービスが多いのが特徴です。
ただ以前は、ポイント還元率があまり高くなくて、楽天ポイントほどザクザク貯まる印象ではありませんでした。
最近になって、Yahoo!ショッピングなどのヤフー関連サービスや、その他ポイ活サービスからのポイント交換が充実するなどして、以前よりポイントが貯まりやすくなってきましたね。
Tポイントは、SBI証券とネオモバイル証券(以下、ネオモバ)でポイント投資できます。
通常の株式投資や投資信託の購入に使いたければSBI証券、1株から投資できるサービスや1株から申し込める新規公開株(IPO)への投資、あるいはFXなども活用したいならネオモバと、用途に応じて使い分けるといいでしょう。
『0円投資』で気軽に「経済循環」を体感
——ポイント投資する際に、注意点はありますか?
ポイ活にハマりすぎないことが大切です。
例えば、数ポイントしか還元のないアンケートに何分もかけて回答する、ポイントほしさに不要なものを購入するといった行動は、本末転倒になってしまいますよね。
あまり時間や手間をかけずに、日々の生活の中で無理なく取り組むのがいいと思います。
また、ポイ活やポイント投資に詳しい方に聞くことも重要だと感じます。
私はポイ活を始めた頃、人に聞かずに自力で取り組んでいたのですが、今思うと取りこぼしたポイントがたくさんあったなと……。詳しい方のやり方を見て真似していただきたいです。
——最後に、『0円投資』に興味のある読者へメッセージをお願いします。
『0円投資』の大きなメリットは、誰でも始められるということです。
私が日頃取り扱っている企業型DCやiDeCo(個人型確定拠出年金)は、制度を導入された企業の方や、現役世代の方しか利用できません。活用できる人がある程度限られています。
しかしポイント投資なら、クレジットカードを作れる状態であったり、サービスに必要な口座さえ開設できれば、どなたでも自由に利用できます。購入した株式や投資信託を売却する際も、数日で換金できるので流動性も高いです。
少し大きな話になりますが、日本や世界における日常生活の経済活動は「消費→投資→生産」という流れで循環しています。
誰かが消費したお金が事業者の投資に使われ、次の生産へシフトし、生まれたものをまた誰かが購入する。
『0円投資』をこれに当てはめると、キャッシュレス決済を行うことで消費し、それによって獲得したポイントを投資して、投資によって出た利益をまた消費や投資へ回すという循環になります。
ぜひ『0円投資』を通じて、リアルな経済循環を体験してみてくださいね。
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※取材・文:金指 歩