昨今注目されている「インカム投資」。
インカム投資とは、債券の利子や株式の配当など、資産を保有している間に得られる収益に着目した投資のことです。
投資と聞くと、安い時に買って高くなったときに売るイメージを抱く方が多いかもしれません。
しかし、インカム投資は資産を売らずに保有し続けたまま、配当や利子といった利益を積み上げていくという特徴があります。
今回の記事ではインカム投資の概要やメリットをはじめ、インカム投資向けの金融商品についてもまとめてみました。
- 値動きにあまり左右されることなく、堅実な投資を楽しみたい方
- 今後インカム収入で副収入を得たい方
などは、ぜひ参考になさってください。
金融資産保有中に得られる「インカムゲイン」に着目
「インカムゲイン投資」の「インカムゲイン」について、まず解説します。
インカムゲインとは、資産を保有している間に得られる収益のことで、不動産投資における家賃収入や株式および投資信託の配当などが該当します。
インカムゲインとあわせてよく使われる言葉に「キャピタルゲイン」がありますが、これは資産の値上がりによって得られる利益のこと。
具体的には株式や債券を売却して得られた利益のことを指します(売却によって損失は「キャピタルロス」と言われる)。
キャピタルゲインだけに着目して投資をすると、株価の変動に投資パフォーマンスが左右されることから、場合によっては株価が暴落し大きな損失を被ってしまう可能性も。
一方のインカムゲイン投資では、対象となる資産を保有してさえいれば収入が入ってくることから、株価の短絡的な値動きに左右されることなく一定の収入を得られます。
また万が一株価が下落してしまった場合でも保有を続けていれば、インカムゲインが入り続けるため、下落局面に強いともいえるでしょう。
なぜいまインカム投資が注目されるのか
インカムゲイン投資が注目された背景として、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。
新型コロナウイルスの影響で停滞してしまった経済の落ち込みに対処すべく、各国の金融機関が利下げを含む大規模な金融緩和政策を行いました。
普通預金の利率を見てもわかるように、超低金利の状態が続いている昨今では利回りを追求することが難しいです。
預金金利や債券金利が低迷する中で、より利回りの高いインカムゲインが注目されるのは必然的な流れといえるでしょう。
「超低金利環境が続く中、インカムゲインを得ることすら難しいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、利回りが低い国債がある一方で、相対的に高い利回りを維持している資産も多く見受けられます。
リスクヘッジとして、ひとつの資産クラスだけではなく複数の資産クラスに分散投資を試みることも大切です。
インカム投資のメリットや注意点
インカム投資におけるメリットとして、主に以下の4点が挙げられます。
- 資産を保有したまま収入を得られる
- 損失が生じにくい
- 長期的に安定して投資を継続可能
- 時間的拘束が少ない
まずなんといっても、インカム投資の最大のメリットは資産を保有したまま収入を得られることでしょう。
キャピタルゲインでは対象となる資産(株式や債券など)を売却し、その売却益を利益とすることから、一度に得られる額は多い一方で多額の損失を出してしまうリスクも抱えています。
対するインカム投資であれば対象となる資産を保有したまま利益を得られるため、大きな損失に繋がる恐れが低いといえるでしょう。
また、キャピタルゲインはどちらかといえば短期間で大きなリターンを狙っていく傾向が強い一方、インカムゲインでは長期的に継続して投資を続けていくことを想定しています。
そのため、キャピタルゲインのように多額の利益を一度に手にすることは難しいものの、安定して長期的に利益を得ることが可能です。
そして時間的拘束が少ないのもインカム投資の特徴のひとつ。
キャピタルゲインでは値上がったタイミングを見計らって売買をしなければならず、常に価格変動を注視しなければならないほか、売り時を見極めなければなりません。
特に株式投資に取り組んでいる場合、証券取引所の開いている時間(平日9時から15時)を見計らって取引をする必要があるため、投資と別に本業がある人にとってはなかなか難しいでしょう。
インカム投資の注意点とは
対するインカム投資の注意点ですが、ここでは3点取り上げてみました。
- 元本割れのリスクがゼロではない
- 大きな利益は見込めない
- 利益が出るまでに時間がかかる
まず、インカム投資では元本リスク割れのリスクが存在します。
配当や優待を得るのを目的としていることから少額の利益を積み重ねていくイメージを抱くかもしれませんが、投資であることに変わりはなく、投資額に見合うリターンが得られない可能性もゼロではありません。
倒産などのリスクもあるため、売買を目的としていない場合でも分散投資を心がけるようにしましょう。
また、インカムゲインは年利で考えると数%程度であり、長期的な視野でじっくりと利益を狙っていく投資手法だといえます。
そのため、利益が出るまでに時間がかかるのはもちろん、キャピタルゲインで得られるような大きな利益を狙うことは難しいでしょう。
インカム投資に使える投資手法は多い
インカム投資に使える投資手法について、まとめてみました。
1.不動産投資
不動産投資は、自己所有の不動産や購入した不動産を入居希望者に貸し出し、そこから家賃収入(インカムゲイン)を得る投資手法です。
空室にさえならなければ、毎月安定して一定の家賃収入が得られます。
また、不動産と聞くと多額の資金が必要なイメージを抱く方も多いかもしれませんが、金融機関から融資を受けたうえで毎月の家賃収入の一部を返済金として充てることも可能です。
株価と比べると不動産価格は変動が少なく、動きが大きいときでも1年で5~10%前後となっています。
そのため、長期投資はもちろんある程度まとまった利益を狙いたい方におすすめの投資対象だといえるでしょう。
一方で、空室が長く続けばその分だけ家賃収入が見込めないことに加え、築年数の経過とともに物件価値ならびに家賃が下がる傾向にあります。
つまるところ、不動産投資で成功するためには最初の物件選びがとても肝心であるといっても過言ではありません。
不動産投資におけるインカムゲイン
先にも述べたように、不動産投資では家賃収入がインカムゲインにあたります。
詳しくいえば、毎月の家賃収入から融資の金利分や月ごとにかかった費用・税金などを差し引いたものがインカムゲインにあたるため、利回りが低いワンルームマンションなどではインカムゲインも小さくなりがちです。
そのため、大きいインカムゲインを狙いたい場合には、一棟アパート投資などを検討することをおすすめします。
2.投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金をプロが債券や株式といった金融商品に投資・運用し、その成果を分配する商品のことです。
投資信託の場合、定期的に受け取るお金を「分配金」といい、株式や債券の利子をはじめキャピタルゲインも含まれた金額になります。
そのため、高めの配当や分配金が期待できる銘柄・商品をあらかじめしっかりとリサーチしておくようにしましょう。
注意点として投資信託の運用パフォーマンスによっては減額されたり、そもそも支払われないケースがあるほか、投資信託の運用中には所定の手数料が生じます。
また投資信託を購入する際は積立投資との相性がよいので、併せて検討してみてください。
3.債券
債券では利子収入がインカムゲインにあたり、債券を保有し続けている間は一定の利息が支払われます。
債券にはいくつか種類があり、主なものは以下の通りです。
- 個人向け国債
- 社債
- 外国債
このうち個人向け国債は債券の中でもリスクが最も低いものの、金利が著しく低いことからインカム投資には不向きでしょう。
また社債は個人向け国債より利回りが高い一方で、その会社の信用状況や財政に注意を払う必要があります。
そして外国債はそもそも取り扱っている金融機関が少ないことに加え、一口の購入額が高いので、債券の中では購入へのハードルが高いです。
インカム投資におすすめの高配当株3選
ここではインカム投資におすすめの、高配当銘柄を3つピックアップしてみました。
【8306】三菱UFJフィナンシャルグループ
三菱UFJフィナンシャルグループは国内最大手の金融グループであり、三菱UFJ銀行や三菱UFJ信託銀行といった金融機関が傘下に入っています。
コロナ禍も相まって低金利の長期化が強いられている昨今において、多角的な経営を実施していることに加え、最近では海外事業にも注力しているのが特徴です。
2021年6月時点での配当利回りは4.15%で、年間配当推移も10期以上減配がないことからも安定性の高さがわかります。
【2914】日本たばこ産業
日本たばこ産業(JT)は、たばこ販売会社として世界第4位の規模を誇ります。
株主優待で自社食品を贈呈するなど、手厚い株主還元策が人気を集めていましたが、コロナ禍で業績に影響が及んだこともまた事実。
とはいえ、2021年6月時点での配当利回りは6.23%と高い数値を記録しており、今後もその動向から目が離せないでしょう。
【4502】武田薬品工業
武田薬品工業は、アリナミンやベンザブロックをはじめとした医薬品の開発および販売をしている会社です。
また、昨今では新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってモデルナワクチンの流通体制を確保しただけでなく、ノババックス社のワクチン供給にも取り組んでいます。
配当利回りも2021年6月時点で4.93%となっており、高配当株として長期保有するのに向いている銘柄といえるでしょう。
今回はおすすめの銘柄を3つお伝えしましたが、以下の記事で銘柄の選び方などについても触れているので、よければチェックしてみてください。
インカム投資向けの投資信託3選
次に、インカム投資向けの投資信託を3つ、ご紹介します。
三井住友DS-グローバルAIファンド(為替ヘッジあり予想分配金提示型)
三井住友のグローバルAIファンドでは、世界の上場株式の中からAIの進化や応用によって、今後伸びると予想される企業の株式に対して投資をしています。
投資対象となる企業はAIに関わる企業の中から幅広く選定しており、AIテクノロジーの開発や、開発に必要なコンピューティング技術、ソフトウェアやアプリケーションの提供を行う企業までさまざまです。
分配金は年1回出されており、2019年は0円だったものの、2020年9月25日分の決算では1万口当たり200円を出しています。
分配金利回りは2021年4月時点で54%を超えており、過去の実績からも安定した水準で分配がなされていることがうかがい知れます。
ニッセイ-ニッセイグローバル好配当株式プラス(毎月決算型)
ニッセイグローバル好配当株式プラスは、日本を含む世界各国に対して高配当株式への投資やコール・オプション取引を行うことをメインとして運用される投資信託です。
投資銘柄は配当利回りをはじめ、企業の安定性や成長性、そして企業実績に基づいて選定されています。相対的に配当利回りが高い銘柄が多いのも特徴といえるでしょう。
このファンドも年1回分配で、2021年6月15日の分配実績は1万口当たり50円と、例年並みの高さでした。
分配金利回りは2021年4月時点で39%を超えており、高配当が続いています。
ただし、この商品は信託報酬が年率1.72%と高めなので、その点に注意が必要です。
アライアンスバーン-米国成長株投信
アライアンスバーン-米国成長株投信では、主に成長の可能性が高いと判断された米国普通株式を中心に投資をします。
またこの銘柄ではAからDまで4つのコースを設けており、それぞれ特徴が異なります。
CコースとDコースは毎月分配型であることから積立投資には不向きであるものの、1年でのリターンがCコース(為替ヘッジあり)で32%、Dコース(為替ヘッジなし)で37%を超えています。
AコースとBコースは為替の影響を受けるかどうか(為替ヘッジの有無)が違いになっていますが、いずれのコースも年1回のリターンが30%を超えています。
積立投資をしつつインカムを狙いたいという方は、米国成長株投信Bコースがおすすめです。
インカム投資はネット証券での積立投資とも相性がいい
ここまで、インカム投資についてお伝えしてきましたが、インカム投資は長期で保有してこそ意味があります。
そのため、積立投資との相性が非常によく、インカム投資を目的として投資を始める場合には積立投資も併せて検討するとよいでしょう。
積立投資を始めるにあたって、おすすめの証券会社を以下の記事で取り上げていますので、併せて参考にしてみてください。
※ライター:織瀬ゆり
===インカムゲイン投資に!3大ネット証券を詳しく解説===