預金金利の低下やコロナ禍での収入減などをきっかけに、資産運用に興味を持つ20代・30代が増加しています。
しかし投資を始めようと思っても、どうスタートすればいいのか分からないと思いませんか?そんなときは、お金の専門家・ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)に教えてもらいましょう!
今回は、FPの中で最高峰の「CFP資格」を持ち、マネープランニングから資産運用まで幅広く対応する金子賢司さんに直撃。実は元々お金の管理が苦手だったとか!?そんなご自身の経験や、若いうちに投資を始める際のポイントなどをざっくばらんに伺いました。
業務中の事故がきっかけで「お金の専門家」に
——まずは金子さんのご経歴について教えてください。
私は大学卒業後、株式会社菱食(現:三菱食品株式会社)に就職し、東京や北海道で営業職として勤務しました。入社10年目、業務中に交通事故にあったのを機にお金の勉強を始めて、保険会社に転職。現在はFPやライターとして活動しています。
実は元々、お金があればパーっと使う性格です(笑)。なので20代の頃はお金の管理に苦労しましたね。
——それは意外です!そこからお金に関する勉強を始めたんですね。
営業先に向かう途中で追突事故にあった際に保険金や傷病手当をもらって、社会保険や福利厚生が役立つことを身をもって知ったんです。そこからお金に関する興味が湧いて、FP3級の資格を取得。特に保険の仕組みが好きだったので、保険会社に転職しました。
営業はなかなか厳しかったのですが、人の一生涯の資金計画を立てる「ライフプランニング」の提案が得意だったので、お金に関する相談業務をメインの仕事にしようと思ってFPになりました。
——金子さんは20代から投資されているんですか?
20代の頃は浪費家だったので資金がなくて(笑)。本格的に投資を始めたのは35歳のころで、FXの短期売買からスタートしました。でも短期売買だと資産が積み上がりにくいと感じ、現在はFXの長期運用に切り替えています。また老後に向けて「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を満額運用していますよ。
投資を始めた理由は「老後まで働きたくない!」
——ずばり、20代・30代から投資した方がいいと思いますか?
もちろんです!なるべく早く始めた方がいいと考えています。日本は少子高齢化なので、現在の年金制度が良くなることは考えにくく、老後資金が不足するのは明らかです。なので若いうちから資産運用して、年金に上乗せできるお金を作っていくべきだと思います。
——若いうちから資産運用に取り組むメリットは何でしょうか?
時間を味方につけられることです。資産運用は長期的に取り組むほど、値動きのリスクを抑えやすい性質があります。若いうちならば、リスクを抑えながら資産をじっくり増やしていきやすいんです。
もし20代でマイナスを出したとしても、30代以降で取り返せば済む話。しかし50代や60代での失敗は老後資金にダイレクトに影響するので、大きなチャレンジは難しくなります。
ただ正直なところ、若いうちは老後があまりに遠すぎて、「老後の生活にために投資しよう!」と思ってもやる気にならないと思うんですよ。
——たしかにやる気になりません(笑)。でも金子さんは30代から投資されていますよね。なぜ本格的に投資しようと思えたんですか?
それは、老後まで働きたくないから。今は60代〜70代まで働くのが当たり前の世の中になりつつありますが、老後までお金のために働きたくないんですよね(笑)。
また、例えば給与収入が月50万円の人が、投資資金から月10万円の利益が得られたら、「無理に残業して50万円働かなくてもいいかな」となりませんか?給与以外の収入があることで、会社への依存度を減らせるのもひとつのメリットだと思います。
——投資の利益が心理的な余裕も生み出すんですね。
お金があれば「いつ辞めても大丈夫」というスタンスになって、会社で自由に発言できてストレスが溜まりにくくなり、離職や転職への心理的ハードルも下がる。
私は企業向けのセミナーで、「自由になるために投資をしよう」と伝えています。経済的・心理的に自由になれるなら、若いうちからでも投資をして資産を作った方が有益ではないでしょうか。
まずは節税できる制度から始めてみる
——実際に投資を始めるとき、何から始めたらいいのでしょうか?思い悩んでいる方にヒントをいただけたら嬉しいです。
「まずやってみよう!」というのが私の答えです。まずは少額でもいいからお金を出して、運用してみること。やってみれば投資の内容が分かるし、相場や経済にも興味が湧いて、自分から勉強するようになると思います。
現在は投資信託や少額投資など、100円や1,000円から投資できるサービスも増え、金銭的なハードルも下がっています。だから金銭を失うリスクよりも、時間が失われていくリスクの方が実は大きいかもしれません。
ライフプランや資産運用の相談に来られた方でも、「運用を始めたいんです」と言いながらなかなか行動に移さず、1年後に再会しても「まだやっていないんです」と言われることがあります。「もう1年も無駄しているぞ!!」と声を大にして言いたいですね。
——さまざまな運用商品や投資法がありますが、金子さんがおすすめしているのは何でしょうか?
まずiDeCoを利用してほしいです。iDeCoは自分で運用する年金のことで、月5,000円から取り組めます。最も大きなメリットは、その年に積み立てた掛け金を課税所得から全額控除できること。大きな節税効果があるのでおすすめです。
(例)年収500万円の会社員が30歳からiDeCoを始め、月1万円(年12万円)掛け金を積み立てた場合
- その年の課税所得(所得税):2,360,500円
- その年の課税所得(住民税):2,410,500円
それぞれから年間12万円を差し引ける。その結果、その年の税金は……
- 所得税:12,000円減額
- 住民税:12,000円減額
トータル24,000円の税金が減少。60歳までの30年間の税額軽減額は、なんと72万円(試算より)。
また2022年10月より、企業DC型に加入している人でもiDeCoを併用可能になるので、より多くの方がiDeCoを使えるようになりますよ。
※iDeCoに関してはこちらの記事も参考にしてください。
——他に税金面でメリットのある制度で、利用しやすいものはありますか?
「生命保険料控除」といって、生命保険や医療保険などの保険料を所得から控除できる制度も利用するといいでしょう。個人年金保険に加入してこの生命保険料控除を利用すれば、年4万円まで税金から控除できます。
——iDeCoや個人年金保険は、60歳以降に引き出せるお金ですよね。60歳より前に必要なお金は、どうやって用意すればいいのでしょうか?
株式投資や投資信託で運用していくのがいいと思いますが、その際は「NISA」や「つみたてNISA」を利用すれば、取引で得た利益に税金がかからなくなります(NISAは年120万円、つみたてNISAは年40万円まで。それぞれ年数に上限あり)。
もっと少額から運用したいなら、ポイント投資や少額投資を始めてみてもいいでしょう。FXも最近は数万円〜10万円程度から運用できるようになりました。まずは何かしら始めてみること!これが重要です。
※NISAに関して詳しく知りたいときはこちら。
利益が生活費を上回るのを目指して、コツコツ投資し続ける
——少額から投資を始める際、何かポイントはありますか?
少額投資はとにかく地味で、テンションがなかなか上がらないですよね(笑)。ただ最初はなかなか増えなくても、続ければ続けるほど利益が伸びやすくなるので、コツコツ続けるのが大切なポイントです。
投資家が「お金が増えるスピードの方が使うよりも早いから、お金がどんどん貯まる」と言うのをよく聞きますが、これは長い期間投資をしていたから実現できること。私も投資の利益が日々の生活費を上回った瞬間に、投資がとても楽しくなりました。
20代から投資して、リーマンショックやアベノミクス時の相場に参加していたら、今よりももっと経済的に豊かだっただろうなと思います。早く始めておきたかったですね。
——では最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。
私は老後資金が確保できる目処が立っているので、「この先も生活していけるだろう」という安心感があります。だから好きなことで生計を立てて、自由度の高い生活が送れています。
少し乱暴かもしれませんが、給与収入があるうちは投資で失敗してもなんとかなります。資産運用において若さは大きな武器。経済的・心理的に自由な生活を送れるよう、準備を始めてみてはいかがでしょうか。
——本日はありがとうございました!
※取材・執筆:金指 歩
少額から投資を始めるなら、こちらの記事もご参照ください。